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2002年5月30日 (木)

場面から書け (その二)

 人間が登場しない(あるいは関与しない)物語はあり得ない。動物や昆虫しか登場しないものもあるだろうが、それらはみな擬人化されたものだ。いずれにしろ、語っているのは人間である。神と言う人もあるかもしれないが、それは今はさておく。

 物語には、最低でも一人の人物の設定が必要である。たとえば作者が、個人的なある種の「情緒」を表現したいとして、その情緒を普遍化しなければならないということもあるが、まず第一に、その設定した人物を動かさなくてはならない。
 その人物についての要約や説明も必要だが、それだけでは動いてくれない。人物が動かなければ、物語も進まない。それにはやはり場面が必要だ。場面には、つまり行動が伴う。必然的に人物は動かざるを得なくなる。
 だから、まず場面から書け。要約もある程度必要だが、それはあとでもいいし、適時挿入することもできる。第一、人物の閲歴や観念だけを要約(この場合の要約は、叙述方法としての要約)されても、読者は退屈なばかりで、作中の世界にのめり込めない。物語を読む最大の楽しみは、ある人物の体験(精神的なものも含め)を、あたかも自分が体験しているかのように、追体験していくことにあるが、それを妨げることになる。

 そして、もう一つ。人間は一人でも行動することがあるが、たとえどこかに閉じ籠もっていたとしても、その背景、つまり環境が消えることはない。環境とは社会であり、他者である。これらの存在なくして、人間は存在することはできない。だから、ある種の小説には、物語上に一人しか人物が登場しないものもあるが、どんな短いものでも、最低二人以上の人物が登場して、はじめて話が成立する。というより、他社の存在なくして、場面は動かず、したがって人物も動かない。
 まず場面、そして第二の人物。そこから書け。

(以上は、自分のためのノートであり、要するに、今書いている小説に関して、自戒しているわけでした)。

 

(初出:Lycosダイアリー「創作の台所」)

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