« 中井英夫の「無用者のうた」論から | トップページ | 短説:作品「症候群」(五十嵐正人) »

2005年2月18日 (金)

短説:作品「ママムシ」(向山葉子)

   ママムシ
 
            
向山 葉子
 
 二人の子供たちは、朝起きてから夜、寝入
ってしまう直前までトップギアで突っ走る。
「一緒に布団に入るから、もう寝ようよ」誘
わなければ、決して眠らない。誘った方はと
いえば、子供より先にもう夢うつつ。
 何でこの子、こんなに眠らないんだろう。
赤ん坊って、一日の大半を眠って過ごすって
嘘じゃない。早く眠ってよ。眠れったら。こ
れじゃ、私なんにもできない。本も読めない。
こんなモノ、産まなきゃよかった。何でこん
なことになったんだろう。もっと他に、しな
くちゃならないことがあったはずなのに。も
う絶対子供なんて生まない。ぜーったい、生
むもんか。
 気づいたらもう夜明けだ。私は欠伸を一つ
すると、また布団に丸まった。あと二時間は
眠れる。七時に起きてマヤを送り出し、九時
にヨシトを幼稚園へ。茶碗を洗って、洗濯物
を干して掃除機をかけて、お風呂掃除をする。
もう十一時半。ヨシトを迎えに行って、スー
パーで買い物をする。お昼をすませて少し休
んでいるとマヤのご帰宅。三時半から絵の教
室があるので、それまで二人を公園で遊ばせ
る。仲のいいママと木陰でお喋り。
「佐々木さんとこ、離婚するらしいわよ」
「えー、何で。ご主人、マメな人なのに」
「そのマメさがさ、他の女に向いたらしいの」
「どこの女よ」
「それがさ、占い師だって」
 ママーッ。マヤの驚いた声がする。
「どうしたの?」
「これこれ」
 幼虫が羽虫を食べているところだ。それも
頭から。
「これね。赤ちゃんがママを食べて大きくな
るんだって。テレビで見た。この前」

〔発表:1998年5月第51回東葛座会/初出:1998年10月「日&月」第6号/「西向の山」upload2002.9.14〕
Copyright (C) 1998-2005 MUKOUYAMA Yoko. All rights reserved.

|

« 中井英夫の「無用者のうた」論から | トップページ | 短説:作品「症候群」(五十嵐正人) »

創作」カテゴリの記事

短説〈向山葉子作品〉」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/75251/2988626

この記事へのトラックバック一覧です: 短説:作品「ママムシ」(向山葉子):

« 中井英夫の「無用者のうた」論から | トップページ | 短説:作品「症候群」(五十嵐正人) »