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2005年3月30日 (水)

短説:作品「少年」(福田政子)

   少 年
 
            
福田 政子
 
 一時間目の授業開始のベルが鳴った。校舎
の廊下は、静かになった。六年二組では、い
きなり担任の塩田先生がどなった。「これが
ら呼ばれる者は、前へ出て来い。青山春男、
山田透、大野清、中山義男……」と先生は八
人の生徒の名前を次々に呼ぶ。呼ばれた者は、
教壇の前へ出てきた。先生は、「そこへすわ
れ、何で呼ばれたか、よく考えてみろ」。呼
ばれた生徒はひざをかかえてうつむいている。
教室の中は、「何だ何だ」とがやがやした。
「清、何で呼ばれたがわがったが」と先生。
清は、うつむいたまま、「きのうの萱燃しの
ことだと思う」「そうだ。それが、どういう
ことがわがってんのが。囲りには、何軒もの
家が建っているんだぞ」。先生の声はいよい
よ大きくなった。「今日一日すわってろ。よ
く反省しなければ、家さ帰さねど」。シンと
静まりかえる教室。先生が、「清、きのうは
大変だったな」と、言った。清は、おずおず
と立ち上がり、「きのうは大変だった。みん
なと、火で遊んでいたら、急に燃え広がっち
ゃって、大あわてで消したんだ。透ちゃんな
んて、ジャンパーで火をたたいて消したんで、
ボロボロになってしまった」と話しているう
ちに、清は興奮してくる。先生は「迷惑をか
けた家に一軒一軒あやまって来い」と、どな
る。塩田先生もその後、ひとりであやまり歩
いた。一ヶ月後、職員室に、「生徒に鉄砲で
うたれた」と、若い女から、電話があった。
篠で作った鉄砲である。空気の圧縮で、弾に
した木の実を遠くに飛ばすしかけのものだ。
その木の実があたると痛い。これも春男、透、
清、義男の四人組のしわざであった。その時、
四人組は、女生徒のスカートめくりで騒いで
いた。塩田先生は、教室のドアをガラッとあ
け、「清」と、どなった。

〔発表:1990年2月第62回東京座会/初出:「短説」1990年2月号/再録:年鑑短説集(4)『海の雫』1990年12月/〈短説の会〉公式サイトupload:2005.1.1〕
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