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2005年10月

2005年10月24日 (月)

玉川(多摩川)万葉歌碑(3)

前回は碑面が暗くなってしまいましたので、アップ写真を撮り直しました。

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2005年10月22日 (土)

短説:作品「ニシノソラ」(すだとしお)

   ニシノソラ
 
           
すだ としお
 
「なに、してるの?」
「教えてあげない」
「教えて」
「ほんとに知りたいの? 知らないほうがい
いと思うわ」
「……」
 どうしよう。なにか恐いことでもあるんだ
ろうか、と思いました。赤く染まっているニ
シノソラには、ポンポンにお腹をふくらませ
た子どもたちが並んで浮かんでいます。ぼく
が話しかけた女の子もポンポンお腹です。
 でも、なぜ、ニシノソラに、ぼくは浮かん
でいるのでしょう?
「自分の名前思い出して、帰っていったほう
がいいと思うわ。それとも、ほんとにお腹を
ふくらませたいの? 私たちは息を吸いこん
でいるだけ」
「……」
 ニシノソラの向こうはヤミノソラです。ぼ
くは、ぼくの名前を思い出そうとしました。
でも思い出せません。ニシノソラは、いつま
でも赤く染まっています。
「ああなるのよ」と、女の子が指さしました。
 口笛のような音が聞こえました。
 お腹が破れてしまった男の子が、ヤミノソ
ラに向かって飛んでいきました。男の子が手
を振っています。浮かんでいる子どもたちも
手を振りかえしました。ぼくも手を振りまし
た。名前を思い出せないぼくは、息を吸いこ
んでみました。冷たくも温かくもない空気が
入ってきました。息を出さないと苦しくなり
ます。でも、息を出せないのです。空気は入
ってくるだけで、出ていきません。お腹がふ
くらんでいきます。
 ヤミノソラまで飛んでいくために息を吸い
こんでいるのでしょうか。

〔発表:平成11(1999)年1月東葛座会/初出:「短説」1999年2月号(*フランス語訳併載)/再録:2000年4月WEB版「短説」桜花号/〈短説の会〉公式サイトupload:2005.6.10〕
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2005年10月18日 (火)

短説:作品「傘」(石川正子)

   
 
            
石川 正子
 
「あ、傘!」
 ドアを出ようとした輝夫は言った。美佳は
風呂場に干しておいた折り畳みの傘を持って
きて、輝夫の前で丁寧に畳みだした。別れを
惜しむかのように、ゆっくり綺麗に畳んでい
く。輝夫はその手を黙ってみている。
「朝早く、ごめんね。今日、天気だったら子
供と遊園地に行く約束をしてたもんで……」
「いいのよ、気をつかわないで。わたしネグ
リジェだから、ここで……」
 輝夫は、じゃあ〜とでもいうように傘をあ
げドアを出ようとした。美佳は、輝夫の背に
顔を埋めた。輝夫が向き直り、美佳を抱え込
んでキスをした。
 昨夜の激しい雨音が美佳の心にドラムのよ
うに響き、いまなお鳴り響いてやまない。
 関係を持つようになって半年、久しぶりの
輝夫との一夜であった。
 子供好きの輝夫は、何かというと『子供』
と言う。その言葉に美佳はむなしさを覚える
が、あきらめるように自分の心を慰める。
 昨夜の残り香を嗅ぐかのように美佳はベッ
ドに横たわった。ふとサイド・テーブルを見
ると、輝夫の煙草が置いてある。美佳は煙草
を掴んだ。
 休日の朝六時、廊下には誰もいなかった。
ネグリジェのままエレベーターのほうに忍び
足で行った。角のところで顔だけをだし、エ
レベーターの方角をみた。美佳の視線に背中
を向けて輝夫は立っている。他には誰もいな
い。嬉しさのあまり声をかけようとした時、
輝夫は折り畳みの傘をぱっと広げた。美佳は
息をのんだ。輝夫は、傘をぐしゃぐしゃに畳
み直し、柄のところに傘袋を結んでいる。
 煙草を握り潰して、美佳は立ちすくんだ。
エレベーターの閉まる音が聞こえた。

〔発表:平成12(2000)年5月東京座会/初出:「短説」2000年8月号/再録:「短説」2001年5月号〈年鑑特集号〉*2000年の代表作「天」位選出作品/〈短説の会〉公式サイトupload:2003.12.4〕
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2005年10月15日 (土)

玉川(多摩川)万葉歌碑(2)

大きい画像で送るとどうなるか。

ts2a0002.JPG

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玉川(多摩川)万葉歌碑

はじめてのモブログ、実験!
自宅から歩いて行かれる、一番近くの文学碑です。

『多麻河にさらす手作りさらさらに何そこの児のここだ愛しき』(万葉集巻十四)

051015_154601.JPG

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2005年10月10日 (月)

短説:作品「鏡」(宮禮子)

   
 
             
宮 禮子
 
「この鏡、自惚れ鏡でね、色白に見えるんだ
よ」
 鏡台の前で髪を結いながら母はいった。母
は時々そういう。自分の色黒を気にしている
のか――また、母は「和子、この鏡はね、い
い鏡なんだよ」と、鏡に指を押しあてた。
「指が少し離れてうつるだろう。これは鏡が
厚く上等なんだよ」
 この鏡台は母が自分で買ったのか、母親が
用意してくれたのか知らないが、五人兄弟の
末っ子だった母が結婚する前に父親は亡くな
っていた。その父親は腕のいい建具職人だっ
たそうだから、鏡の見分け方も教えられたの
だろう。
 小学生だった和子には、鏡にうつる自分が
ほんとうでないことを知りながら、それでも
うれしそうな母が不思議だった。
 
 新しい家の洗面所には大きな鏡がはめ込ま
れていた。鏡の両脇は物入れになっていて、
扉も鏡だった。営業マンは「三面鏡になりま
すよ」といったが、使いにくかった。
 和子が結婚する時、母が三面鏡を買ってく
れた。その三面鏡は幾度かの引越や、こども
が物をぶつけて鏡が割れてしまったので処分
した。目常の身繕いは洗面所で充分だ。
 唯、和服を着る時、姿見が欲しかった。
 家具屋で姿見を見ていると、店員がそばに
来ていった。
「この品はデパートやブティックにも納めら
れているんです」
 背丈程の高さでキャスターがついている。
「全身がすっきり見えるんです」
「……」
 和子は角度をかえるふりをして、鏡に指を
あててみた。

〔発表:平成16(2004)年4月上尾座会/初出:「短説」2004年7月号/〈短説の会〉公式サイトupload:2005.8.25〕
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