秋葉信雄氏が第二短説集を刊行
短説の会講師でもある秋葉信雄同人の二冊目の短説集が刊行されました。表題は『DEAD DECEMBER(死んだ師走)』。発行日は「9.11」。同じく講師のすだとしお同人の編集で、製作・発売は崙書房出版(℡04-7158-0035)。定価は税込で2,100円。ご注文は直接書肆へどうぞ。ISBN-8455-1129-0
内容は、前作『砂の物語』(平成12年11月刊)以降に書かれた短説集成で、〈五属響和〉、〈DEAD DECEMBER〉、〈ガラスのネクタイ〉、〈Dreams over the Graves〉の四つのパートに、英文作品や翻訳も含め51篇収録されています。前作ではやや抑えていた(本性を隠していた?)部分を増幅させ、あるいは自由に想像の羽根を延ばし、アキバ・ワールド全開といった感じ。
実は西山は「解説」を仰せつかったので、その制作段階の初期から読ませていただいていました。ですのでどんな仕上がりになるか楽しみにしていたのですが、表題にふさわしい渋い装幀で、内容共々、実に素晴らしい出来で、「カッチョいい」というのが第一の感想です。
中身についてはその「解説」に譲るとして、(因みに、解説のタイトルは「多言語クロスワードのビート感と秋葉式コード進行」というもので、なんとなく想像してください)、 昭和60年9月に創始された「短説」は、現時点で丸21年の歴史を有し、数多くの短説作家と、テーマもスタイルも多岐にわたる幾多の名作を生んできましたが、過去に短説集を二冊出したのは米岡元子さんただ一人しかおらず、奇しくも「同期」の秋葉さんが二人目となるわけですが、これは実に大変なことです。
いや、同人もベテランになれば、すでに二冊分になるぐらいの作品数を書いている人は他にもいます。しかし、それを本にするには物凄いエネルギーを要し、何より本にするに値するコンセプトが必要で、なかなか一冊にまとめるのは難しい。それを思うと驚嘆します。
本の紹介でこういうことは言わない方がいいかもしれませんが、たぶんこの本は、理解できない人には理解できない部分があると思います。いや、理解できるできないというより、ピント来るか来ないか。今も僕はこの原稿を書きながら、British Invasionの楽曲をかけっぱなしにした海外のインターネットラジオを流していますが、この本はブライアン・ジョーンズがいた頃のストーンズやキンクス、ヤードバーズ、ビートルズの『REVOLVER』、あるいはドアーズやCSN&Yといったあたりを聴きながら読むのが、正しいとまでは言いませんが、ふさわしい。それから1960年代後半の新宿や神田。そして〈運動〉。そう言ってピント来ない人にはピント来ないという性質を有している。もちろん、だからと言って、万人の理解を拒むものではありませんし、短説には珍しいハードボイルドな作品群として、面白く興味深く読めるものです。ただ僕は、ここに、アジア人(というより黄色人種極東島国人)の文章によるリズム&ブルースを濃厚に読んだわけなのでした。
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