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2006年10月16日 (月)

短説:作品「ホットドッグ」(桑井朋子)

   ホットドッグ
 
            
桑井 朋子
 
 原っぱで、少年が凧を上げようとしている。
「ほう、まだ上がってませんか」
 売店から戻ってきたK氏が、そう言いなが
らベンチにいる私の横に座った。
「ええ、だってあんな大きな凧じゃねえ」
 私はしかし、凧よりはK氏が買ってきたも
のに仰天してしまう。なんとそれはホットド
ッグではないか。つい先刻、二十年ぶりにぱ
ったり出合い、お互い老いを痛感したところ
である。ぼくはもう入れ歯で…、とも言って
たではないか。なのになぜ? それはもう私
らには怪物の如き食べ物だというのに。でも、
「まぁ美昧しそう」
 と私は言う。この怪物にやりこめられると
ころをこの人に見られたくはない。
「あれは何の凧なんだろうねぇ」
「さぁ…」
 私はそれどころではない。まずはその先端
にそっとかぶりつく。すると中のスパゲティ
がずるずると絡り出てき、それを口で引っぱ
ると、今度はウインナーとレタスまでも飛び
出てくるので、私は慌ててまたかぶりつく。
「おっととと」
 横でK氏が奇声をあげている。人の粗相を
見て喜んでいるらしい。私は両の手でしっか
り怪物を捕まえ、より慎重にかぶりつく。
「よーし、それでいい、それでいい」
 ふと見ると、少年の凧がようやく上がって
いた。少年が必死に原っぱを走り、凧は晴れ
た空高くぐんぐん昇っていく。
「おお、あれはUFOだ、UFOだ」
 とK氏が歓んでいる。見ると彼の口周りは
ケチャップだらけで、その手にある怪物から
は、今しも内臓が落下しようとしている。
「あっ危ない!」
 でも今度は私のほうが……

〔発表:平成17年(2005)7月関西座会/初出:「短説」2005年10月号/WEB版初公開〕
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コメント

いや~、うれしいですね。この桑井さんのさくひん。
まだ小生はその「イキ」に達していませんが、
こうした「遊び」は極めて面白し。
すべてが、エロチック、と私には読めてしまって
ハートがほっと・ドッグ。
こんなにあからさまな表現は、今まで短説の世界には
なかったのではないでしょうか。
こうしたことが「ユルセル」状況にまで短説は発展してきたのだな、
と思うと嬉しい気持ちです。
桑井さん、まだお会いしたこともありませんが、
やりますね~。それでは、また。

投稿: 秋葉信雄 | 2006年10月17日 (火) 20:59

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