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2006年12月18日 (月)

短説:作品「セカンド・ステップ」(舘岡有紀)

   セカンド・ステップ
 
            
舘岡 有紀
 
「お義父さんには困るわ!」
 会社から帰るなり、妻につめよられた。
「カイ君に、中国はニセモノ作りの名人だっ
て言ってるのよ」
「作らせているのはパパ達なんだって、海渡
に教えてやれよ」
「母親が中国人の子、幼稚園にいるのに」
 菜箸を握った妻に睨みつけられる。やれや
れ。ネクタイを差し出し、父の部屋へ行く。
 父は海渡とファミコンゲームをしていた。
終りそうもないので、台所へもどった。
「カイ君がグローバルな大人になるよう、海
渡って名前、二人で決めたじゃないのよ」
「すぐ忘れるさ、ニセモノなんて」
「そういう問題じゃない」
 父は町工場をやっていた。プラスチック製
品を成形するための金型を作っていた。とこ
ろが、中国に仕事を持っていかれて倒産。ち
ょうど定年の時期だったので、住居を兼ねて
いた工場はたたんでしまった。
「また魚かよ」
「二度手間なのに。魚の方が高いんだからね」
「海渡はなに食ったんだ?」
「ハンバーグ」
「俺もそれ」
「だめ、冷凍したから。カイ君のお弁当」
 食事の後、父の部屋まで行った。丸めた背
中をむけて座っている。NHKニュースがつ
いていた。海渡は妻と風呂に入ったらしい。
 ファミコンのコントローラーを、また撫で
ているのだと思った。プラスチック製のそれ
を検査するみたいに、節した指で触るのだ。
 父はTVを消す。まだ音が鳴っている。耳
慣れた音楽。四角く平たい箱を小脇にかかえ、
立ち上がった。最新型のノートパソコンだ。
「ちょっと出掛けてくる」

〔発表:平成18年(2006)4~5月東葛藤代合同座会~ML座会/初出:「短説」2006年6月号/WEB版初公開〕
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コメント

こんばんは、舘岡さん。「セカンド・ステップ」、いい作品
ですね。一家の様子がよくわかり、まるで寅さんの
映画を見ているようです。主人公の夫が、櫻のご主人
ひろしさんのようです。お義父さんは、まるで寅さんのよう。
しかしパソコンを抱えて、どこへいくのか?
そのよくわからないところが、「セカンド・ステップ」かも
知れません。またお会いしましょう。それでは、また。

投稿: 秋葉信雄 | 2006年12月24日 (日) 19:13

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