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2007年2月 3日 (土)

短説:作品「駅前広場」(水南森)

   駅前広場
 
             
水南 森
 
 タクシーがヘッドライトをつけて走り去っ
た。ロータリーから車が無くなった。
 ベンチに座る少女が、横の女に話しかけた。
 次の問題ね。午後って言ったらなーん時だ。
 一時。
 女が答えた。少女は首を横に振った。
 二時。
 ブーッ。ちゃんと考えて。
 二人の正面の植え込みにスキンヘッドの男
が立っている。首から画用紙をぶら下げてい
た。画用紙には、
 目標一万首 矢継短歌 お題をください
と書かれている。そして、叫んだ。
 残業の、男ら乗せて、快速は、定時にキッ
カリ、車庫に帰れる。二千二百六十五首にな
りました。
 うまいぞ、兄ちゃん。座布団一枚。
 囲む男たちが拍手をした。座り込む者も、
立って缶ビールを飲む者もいる。
 兄ちゃん次は、改造内閣。
 サプライズ、起こらぬことに、驚いて、胸
なでおろす、改造内閣。次、お願いします。
 じゃあ、母ちゃん。
 産声は、オギャーだった、子供らは、成長
を遂げ、母ちゃんと言う。
 もっと色っぽいの作れや。
 駅の入口にシャッターが降りていく。
 わかったわ、二十四時ね。
 残念でした。二十五時。ごご、にじゅうご。
 兄ちゃん、あれだあれ。日本。
 なぞなぞを、出されて惑う、大人いて、日
本の夜は、深まっていく。次、お願いします。
 次の問題ね。丸くて四角、なーんだ。
 兄ちゃん、丸くて四角だってよ。
 ビールを飲んでいた男が、ベンチを振り返
って言った。

発表:平成17年(2005)11月藤代東葛合同座会~ML座会/初出:「短説」2006年2月号/WEB版初公開〕
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コメント

水南さんの「駅前広場」、面白いですね。
小生の好きな作品の一つ。
ビールを飲んでいる男たちと、歌を作りつづけるスキンヘッドの
男。そして二人の少女のあどけないなぞなぞごっこ。
まったく関係のない二組が、いつしか「駅前」という
同じ空間を経験する中から、最後は交じり合っていく
面白さ。「丸くて四角」は「日の丸」でしょうか?それとも・・・。
最後の会話、まるで「自分」が言っているようです。
それでは、また。

投稿: 秋葉信雄 | 2007年2月11日 (日) 14:19

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