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2007年7月

2007年7月16日 (月)

雨の日曜と軽井沢

 台風が過ぎて、朝方、今年最初の蝉が鳴き始めた。土曜日からの雨は、僕にとっては恵みの雨だった。いや、決して僕が望むような「恵み」などはもたらされていないのだが、このところさすがに疲れがたまっていて、休養にはありがたかった。
Ts2a0261 七月から職場での立場が変わった。それでいきなり仕事量が増えたわけではないが、勤務時間のシフトが変則的で、少しずつ疲れが蓄積されていた。ソフトボールと野球も春以来毎日曜連戦が続いていた。そして先週の月・火と、これは遊びであり、優雅な旅だったのだが、五十嵐正人さんの小説『三人暮らし』の“三人”と軽井沢・信濃追分に文学旅行をしてきた。翌水曜から土曜までは普通に仕事があり、土曜の夜に、ソフトボール関係の懇親会があった。
 雨の日曜日。日曜が雨ばかりでも困るのだが、たまにはいい。そして、きのうは短説の東京座会がある日だ。こんなチャンスは滅多にない。しかも前日から確実に雨になることがわかっていた。ソフトボールの夏季大会、大事な最終戦、普段なら雨っぽくても一応準備するのだが、もう準備もしなかった。しかし、懇親会から帰ってきたらもうぐったりで、これから短説を書き、翌日座会に行こうという気はなくなっていた。
010shinkarueki それできのうは、一日中ごろごろしていた。ほとんど寝ていた。何もする気が起きない。本当は家でやる仕事(ある講演録の原稿整理・成形)もあるのだ。それ以上に、軽井沢旅行の記事をこのブログにアップしたいというのがあったのだが、まったく手がつけられなかった。きょうもすでに午後二時半をまわった。夕方からは、地元の健全育成委員の行事で、小学校の校舎に手作りのスクリーンを垂らし、小学生らに屋外映写会をやる。かき氷も配り、一学期の終わり、夏休みはじめを彩る、恒例の行事なのだ。(もう自分の子供は小学校を卒業してしまったのだが)
Ts2a0468 僕の個人サイト「西向の山」には、「軽井沢文学散歩」のページがあるが、いまだ未完で、本当は軽井沢以上に力を入れたい信濃追分についてはまったく手がつけられていない。それをこのブログで引き継ぎたいと思うので、これからしばらく断片的にでもアップしていこうと思う。
 今回は初めて新幹線で行った。そしてすぐに、しなの鉄道に乗り換え。写真はその様子。若い女の子のアテンダントが非常に親切であった。右に見えているのは、懐かしいEF機関車で、またもや行きそびれてしまったが、軽井沢駅構内にある鉄道博物館。旅のはじまりである。
 なお、この旅の様子は、すでに「裕子ねーんね」ブログにアップされています。まずはそちらでどうぞ。 

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2007年7月 6日 (金)

短説:作品「地球儀の夜」(道野重信)

   地球儀の夜
 
            
道野 重信
 
「シンナーないなら帰る」
 美香が立ったが、少年たちはぼうっとした
目で天井を見つめたままだった。「サンタが
来た」とそのうちの一人が言った。美香は構
わず溜り場のアパートの部屋を出た。せっか
くクリスマスなのに、あいつら自分たちだけ
で全部吸って……ムカツク! 部屋にいた少
年たちのうちの一人を、美香は好きだったよ
うな気がする。もうどうでもいいや。階段を
降りようとして足がもつれた。きっと部屋に
満ちていたシンナーのせいだ。バカヤロ!
 駅までの商店街は街路樹に電飾がつけられ、
ほとんどの店は閉まっていたが、樹の淡いオ
レンジ色の光は灯ったままだった。美香は尿
意を覚えた。駅まで我慢できそうにない。ア
ンティークの店がまだ開いていた。客用のト
イレは二階にあった。小物類がびっしりと並
んで、通路が狭い。小物の問から小人が何人
も美香を見ていた。美香は気にしなかった。
きっと、シンナーのせいだから。
 トイレの中は広かった。壁も天井も床も宇
宙の絵で、ドアを閉めてしまうと、浮いてい
るようだ。地球儀の形のランプが灯っている。
地球儀のランプの棚に分厚い本が乗っていた。
美香は便器に座ったままぺージをめくった。
それは美香のアルバムだった。尿が水を打つ
音が続いていた。撮った覚えのない写真ばか
りだった。アルバムの自分が少しずつぐれて
いく。いい子に育ってほしいなと美香は他人
事のように思った。アルバムの最後は、シン
ナーを吸っている自分だった。
 店から出ると、急に外が騒がしくなってい
た。「少年が道路で暴れている」「危ない」
「車にひかれた!」サイレンの音がした。
 美香はしばらく立っていたが、駅の方へ歩
いた。

〔発表:平成13年(2001)1月通信座会/初出:「短説」2001年3月号/〈短説の会〉公式サイトupload:2006.11.21〕
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