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2007年11月

2007年11月25日 (日)

短説:作品「海」(西山正義)

   
 
            
西山 正義
 
 おれは死にたいと思ったわけではない。し
かしそれは明らかに死への誘惑だった。海を
見ていた。いや、海を見ている自分を見てい
た。その海は、たとえば冬の日本海の荒海と
いったものではなかった。
 右手に江ノ島が見えていた。眼下には、砂
鉄を多く含んだ砂浜がなだらかに伸びていた。
初夏の湘南である。空はあくまでも晴れてい
た。平日の午後。幼児を遊ばせている母親た
ちのグループが一組いただけだった。サーフ
ィンのメッカであるが、ビッグ・ウェーブに
はほど遠く、波も穏やかだった。
 おれは独りでいたのではなかった。勤務先
の大学が主催する、ある公開講座のフィール
ドワークの付き添いでいたのだった。その講
座は、二人の教授が交互に全国の神社仏閣に
ついて講義するというものだが、実地見学会
があるのが売りであった。受講生はほとんど
が高齢者であるが、すでにみな顔見知りで、
暗い翳などどこにもなかった。
 その浜は、新田義貞の鎌倉攻めで有名で、
つまり稲村ヶ崎なのだが、現在では鎌倉海浜
公園として整備されている。広場には逗子開
成高校ボート部遭難事件の慰霊碑があった。
 おれが死に誘われたのは、しかしその時で
はない。それから一年もして、その時の情景
を思い浮かべた時だった。海に向かって佇ん
でいる自分。一行から離れ、一瞬独りになっ
たのは、いい構図の写真を撮ろうとしたため
で、特に意味のある行動ではなかった。
 おれは浜辺に立っていただけだ。なのに、
その自分を後ろから見たおれは、にわかに死
の予感に包まれた。それは、十五のころ夢見
た、甘美な死といったものではなかった。か
といって、恐れや戦きとしてのそれでもなか
った。ただ、海が広がっているだけだった。

〔発表:平成19年(2007)6~7月ML座会/2007年9月号「短説」/WEB版初公開〕
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2007年11月21日 (水)

江戸時代の村絵図を歩く

2007112101_2 いやー、今日は絶好のフィールドワーク日和でした。朝家を出た時は、天気は好いが風があり、山方面は寒いかもと懸念していましたが、歩くにはかえって丁度いいぐらいでした。“晴れ男”伝説?もこのところ怪しくなっていたのですが、これでまた一つ伝説が……。

 さて今日は、まさに「フィールドワーク」といえるものをしてきました。博物館の公開講座らしいものでした。江戸時代(文化11年)に描かれた村の絵図と現在の地図を携えて、実地に歩いて検分しようというもの。
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2007112107 中央本線「相模湖」駅を出発。まずはバスで旧小原宿本陣へ。甲州街道沿いに育ちながら、甲州道中にこんな宿場があったとは知りませんでした。内藤新宿から数えて14番目の宿場。布田五宿を一つ繋がりと数えると、10番目。隣り合う駒木野・小仏・与瀬とともに「片継ぎの宿」(説明省略)で、相模四宿と呼ばれたそうな。
2007112110 小原宿本陣(旧清水家)は、相州の甲州街道沿いにあった本陣では唯一現存するものだとかで、すぐ近くには「小原の郷」という郷土資料館も。
 そこからまたバスで赤馬(あこうま)へ。
 ここからが本題で、文化11年の村絵図を対照しながら、旧「相模国津久井県千木良村」を歩いてきました。
 以下の行程は、レジュメをそのまま写します。

・月読神社 (天明・文政の絵図に見られる水田跡を探索)
  ↓
・大通寺
  ↓
・市ヶ沢 (宝暦の絵図に見られる三本木御林を遠望)
  ↓  
・字「宿」 (高札場跡を探索)
  ↓
・牛鞍神社
  ↓
・善勝寺 (宝暦の絵図に見られる新御林を遠望)

※道々は、 (文化の絵図を用いて旧道を検証)
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 最高の天気に紅葉。江戸時代の絵図を実地に照らし合わせ、なるほどなと思いながら歩いてきました。はっきり言ってしまえば職務は高齢者のお守りみたいなものなのですが、楽しかったですね。

 僕らはのどかな農村風景を堪能し、日本人の原風景として郷愁を誘われたり、また憧れたりするわけですが、当たり前のことながら、ここにも現代の普通の生活があるのだということを思ってしまいました。
 暮らしている人にとってはどうなのか。でもここはもう通勤圏なんですよね。中央「本線」と言いながら、新宿や御茶ノ水を走っているのとまったく同じ通勤電車が走っていて。でもやっぱり田舎でした。東京からひと山越えたすぐお隣、でも山梨県ではなく、ここは横浜や川崎もある同じ神奈川県なんですがね。
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2007年11月20日 (火)

美術館フィールドワーク

Ts2a0517 今日は「ミュージアム講座」のフィールドワークで、東京八重洲のブリヂストン美術館に行ってきた。現在、「セザンヌ 4つの魅力」と題された特集展示が開催されている。初夏にも行ったのだが、セザンヌとあって、その時とは比べ物にならないぐらいの入りであった。
 ひと月前にも九段の山種美術館に同行した。やはり生の絵を観るのはいい。しかも館長じきじきの解説付きだ。僕は仕事で行っているわけなのだが、まったく役得である。
 館内を歩き、絵を観、人を見ていたら、「美術館で会った人だろう」という懐かしいフレーズがしきりと脳裡に浮かんだ。何か短説ができそうであったが、出てきそうで出てこなかった。
 美術館の喫茶室の珈琲はなぜ美味しく感じるのか。実際、美味しい珈琲を淹れてくれる美術館が多いのだが、喫茶室やカフェテリアにもセンスが感じられる美術館は嬉しい。多少高くてもリッチなひと時が過ごせるというものだ。
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 明日もフィールドワークの付き添いに行く。いきなり趣向は変わって、昔の村落絵図をもとに江戸時代の村を考えるという講座。相模湖の旧千木良村へと飛ぶ。寒いかもしれないが、天気は好さそう。こちらも楽しみである。

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2007年11月19日 (月)

久しぶりに公式サイトを更新

Ts2a0488 先週ようやく月刊『短説』11月号の編集を終え、本部に送稿した。今日は五か月ぶりに公式サイトを更新した。

 懸案だった新同人推挙の通知も届いた。公式サイトにもアップした通り、新たに十一名の会員が同人に推挙されている。同時に、現時点の同人名簿も添付されており、これで会の構成が正式にわかって良かった。
 
 関西座会のブログを発見した。まだ手探り状態のようだが、今後の展開が楽しみである。

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2007年11月 3日 (土)

小川和佑先生フィールドワーク

Ts2a0503 今日は(厳密には昨日ですが)、文芸評論家の小川和佑先生と、深川の芭蕉記念館から清澄庭園にかけてへ散策してきました。生憎の天候でしたが、晴れ男と呼ばれている自分を信じ祈っていた甲斐あって、途中パラパラと雨粒が落ちてくる場面もありましたが、最後までなんとか持ちました。

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Ts2a0506  例によって、先生が受け持っている明治大学の公開講座で、前期と後期に一度ずつ取り入れている野外授業に同行したのでした。リバティアカデミーでの講座は、平成十二年の秋からスタートしていますが、もう何回フィールドワークに出掛けたでしょう。
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 僕が同行しただけでも、2001年・高尾の森林科学園、2002年・日比谷公園の十月桜、2003年・浅草~向島、そして秋の軽井沢、ここまではプライベートでの参加で、昨年からは仕事を兼ねて(というのも変な表現ですが、僕にとっては仕事というよりゼミ合宿のミニチュア版みたいなもので)、臨時休業だった新宿御苑(急遽変更し皇居方面)、雑司ヶ谷・鬼子母神~椿山荘、飛鳥山~旧古河庭園、そして今回と、計八回。
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 ゼミ合宿に全十六回参加し、OB会で花見や文学散歩を八回行っている。ほかに結婚式で、兵庫の出石や山梨甲府にも行った。思えば先生と一緒に随分いろんな所へ行きました。今日訪ねたコースも、平成元年のゼミ合宿で歩いている。ただしこの時は、僕はすでに社会人になっていて、夜からの参加で、一日目の文学散歩には同行していない。先生は僕もいたような気でいますが。(代わりに家内が同行していた)


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 それもこれも、すべてはあの日光に行った第一回目の合宿が機縁。あれから二十四年。さすがに年月の経過を隠せなくなってきました。それは言いたくない、考えたくない、忘れていたいことなのですが。
 さて、実際どこをどう歩いたか。どんな話があったか。それは写真に語らせましょう。では、おやすみなさい。
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2007年11月 1日 (木)

三ヶ月半ぶりに更新

Ts2a0490 もう十一月である。このブログも三ヶ月半サボってしまった。制作管理している五つのサイトもまったく更新していない。個人サイトはともかく団体用のものは、更新しなければいけない記事があるのだが……。短説のML座会にもすっかりご無沙汰だ。メンバーが減ったので、盛り上げなければいけないのに。短説も書いていない。いや、それ以前に、ものを書いていない。というより、まったくやる気が起こらない。
Ts2a0491 前の記事は、軽井沢に行ったあと、ソフトボールの夏季大会の合間だった。七月から職場での立場が変わり、ずっと忙しかったのも確かだ。週五日のフルタイムで、当然残業もあり、要するに普通の会社勤めと何ら変わらない。それでいて正社員ではないのは、待遇面で理不尽な気もするが、ともかくそういう生活をするのは、振り返ってみれば約十年ぶりのことなのだった。
Ts2a0492 先週の日曜は仕事で、その前は地域運動会だったこともあり、このところソフトボールの方は小休止だが、秋の市民大会では他チームと合同のチームを組んだため、八月の打ち合わせ段階から、十月一週目の最終戦まで、毎週夜遅くまで一種の乱痴気騒ぎだった。
Ts2a0502
 さて、火急のこととして、月刊『短説』の十一月号を編集しなければいけないのだが、これが滞っている。作品の入力は八割がた済んだのだが、あと二作品足りない。今年に入ってから月刊『短説』は、その月の号がその月に発行されている。普通なら当たり前のことだが、いろいろな困難を乗り越え、やっと正常な発行ペースを数年ぶりに取り戻せたのだ。それを今回遅らせてしまいそうである。

※写真は、東京・春日の「こんにゃく閻魔」と「春日局像」
10月26日、「古寺社めぐり」のフィールドワークで伝通院に行ったのだが、その行き帰りの周辺で撮ったもの。

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