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2008年7月

2008年7月10日 (木)

短説:作品「引き舟」(芦原修二)

   引き舟
 
            
芦原 修二
 
 記憶の中では、ここに川が流れていて、秋
には鮭が背鰭波を幾重にも残しながらのぼっ
ていた。
「まあ、こういうことは毎度のことだが……」
 と、少しは今度の旅にもなれてきた。
 口伝では、徳川家康が「きぬ川に布も晒す
や秋の雲」と吟じたあたりのはずだが、いま
にもひからびそうな細い排水堀が流れている
だけである。それよりもむかしなら、このあ
たりまで向こう岸の人の姿も見分けられない
ほど流れの幅が広かったはずだが。
「やれやれ、川をのぼるつもりできたが、こ
れでは〝田のぼりさん〟だ」
 と、自分の姿を振り返って見ると、事実自
分は三艘の空舟を引っ張って、仕付け前の田
んぼの中で西に向かって立っていた。
「やいやい、そこ行く旅ンひと。荷物をひき
ずりどこさ行く」
 土手の上にいたこども達が、声をそろえて
はやしかけてきた。
「秋なら、ここらさシャケとりよ、春ならの
ぼりの小鮎とり」
 と、返事をしたが、わたしがしてきたこと
のあかしは三筋の舟の引きずり跡になって、
東の地平までつづいているだけだ。
 わたしは、いったい何をしているのやら。
これでは、このあたりの人に迷惑作りをして
いるようなものだろう。
「やれやれ、これでは干上がった海を渡るガ
リバーだな」
 と、沈黙していたら、土手の子供たちは、
わたしをからかうのをやめて、西に向かって
歩き出した。その向っていく方角に夕焼け空
が広がりだした。
 ここらにあったはずの湖も干上がっていて、
夕焼け空の地平に黒富士が見えている。

〔発表:平成18年(2006)5月東京座会/2006年7月号「短説」/再録:「短説」2007年6月号〈年鑑特集号〉自選集/WEB版初公開〕
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2008年7月 6日 (日)

大椎城址フィールドワーク(その二)

 竹藪をかき分けてけもの道を登攀。ほとんど探検隊の図。
Ts2a0606  Ts2a0607
 それぞれ意味のある場所だが、手元に資料がないので省略。
Ts2a0608  Ts2a0609
 「大椎城址」の石碑(表側と裏側)
Ts2a0610  Ts2a0611
 このあたりが主郭への虎口(「こぐち」と読む。入口のこと)。
Ts2a0612
 帯曲輪に降りていく。右は「椎台剣鏡碑」
Ts2a0614  Ts2a0616
 このあたりが城の一番の南側で、最後の急坂を降りると、現在この山を所有している地元の素封家の庭に出る。探検も終わり、お礼の挨拶し、城下の集落を通り、大椎本村のバス停へ戻る。
 ほとんど予備知識もなく同行したのが、こちらも勉強になった。まさに考古学講座にふさわしい、そして楽しいフィールドワークであった。

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2008年7月 2日 (水)

大椎城址フィールドワーク(その一)

Ts2a0599 さて、いよいよ大椎城址の踏査開始。大椎本村でバスを降り、要害台の切通しから入って行く。

(※注意:現在、この城址はその山全体が麓のあるお宅の私有地になっている。従って、生涯学習講座のフィールドワークで訪れる旨、三十数年前からたびたび調査に訪れている講師が事前に許可を得て、僕ら一行は足を踏み入れたのであり、通常は勝手に入れないのでご注意!)

←切通しの横井戸

Ts2a0600  Ts2a0601

Ts2a0602 切通しを登ると、少し開けた場所に出る。その約25メートル四方の平たい場所の中央に、馬頭観世音を祀った祠がある。腹が減っては戦はできぬとばかりに、そこでまずは腹ごしらえ。
 朝方は曇っていたが、このあたりで日が差してきて、暑いぐらいになった。本当に晴れてよかった。

Ts2a0603 城の北側は字「後沢」というところで、現在はその先にいわゆる「チバリーヒルズ」と俗称される高級住宅地があり、その調整池が造られた谷状の台地。かつては村田川の支流が流れており、谷状湿地帯の、いわば天然の堀となっていたそうな。
 このあたりだけは千葉県の所有になっているそうで、千葉県が建てた説明板もあったらしいのだが、発見できなかった。2002年にこの遺跡めぐりを行ったある団体のホームページを見ると、たしかにあるので、移設されたか、今は撤去された?
 上の写真のあたりで、流鏑馬が行われたそうである。
Ts2a0604  Ts2a0605
 いよいよ本格的な探検に。藪をかき分けかき分け……。いざ、出陣!

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