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2010年1月12日 (火)

短説「性の読本」芦原修二

   性の読本

            
芦原 修二

 K君。僕は昨夜ジツに妙な夢を見た。それ
に君がかかわっている。君は商事会社の事務
所のような所にいて、スチール机の引出しか
ら一冊の本を取り出して見せてくれた。B6
判五〇〇ぺージ程の本で、最初の約四分の一
は、中、高校生の男子寄宿舎リポート。二百
余人の少年たちが、学生服や私服で、真面目
に、あるいはにっこり笑った顔写真で紹介さ
れていて、それぞれの性体験が語られ、性器
の形、大きさ、勃起した時や縮んだときの特
徴が、絵や写真で示してある。もちろん少女
たちも、一枚土手とか二枚土手とかいう説明
と共に、これも絵や写真で示されていて、ど
んな顔の少年を好むとか、同性や大人のどん
なしぐさに性的興奮を覚える、といったこと
が、克明に記されている。当然合体のしかた
も、同性、異性間の区別なく、何とかいう劇
団の、少年少女や大人の団員によって、例の
四十八手はもちろん、ありとあらゆるケース
が、それを演ずる俳優の性的個性とあわせ紹
介されていた。君が好きだという大村大地少
年。彼は、にっこり笑った全裸写真で紹介さ
れていた。彼の性器はまだ皮をかむっている
よ。そしてその勃起時の特徴は「ゆるやかに
して広大」と記されていた。彼は四所責めを
演じている。この本は、君が貸してくれたの
だが、夢の中の本だから、君が読んでいない
ことは確かだ。だがこの部分だけは君にも読
ませたかった。いずれにしてもこれは、よく
出来た『蝶類図譜』『野鳥民俗図鑑』『川魚
図志』『原色植物図鑑』といった本で〃知の
オーバーフロー〃そのものだ。僕はこれまで
「夢はその人の体験を超えない」を常識とし
てきたが、違う。夢は、体験を超越する。K
君。僕はあの本をもう一度君から借りて読み
たい。この熱い思いをわかってくれ給え。


〔発表:平成4年(1992)6月第81回東京座会/初出:「短説」1992年8月号/初刊:年鑑短説集〈6〉『函中の函』1993年12月/WEB版初公開〕
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