「二〇一〇年のアリバイ」
二〇一〇年も暮れていく。あんなに遠い先のことだと思っていた二十一世紀もはや十年が過ぎてしまったわけだ。娘が大学に入り、息子も高校一年になった。もう彼らの時代だ。“失われた時を求めて”といっても、とても取り返せるものじゃない。途轍もなく長い歳月が流れ去ったのだ。
それでも今年の年末は、二つの“時間”を取り戻す(あるいは取り戻せそうな予感がする)ことがあった。一つは、中学からの友人(というより音楽仲間)のライブに行ったこと。ライブそのものもそうだが、それ以上に友人の変わらぬ“思い”に触れたこと。
もう一つは、小川和佑先生の文学ゼミで、九州に移住した後輩が十四年ぶりにラドリオが営業している間に帰省できるというので会ったのだが、それが思わぬ大同窓会になった。「ラドリオに集合」の一言で、声をかけた全員が間違うことなく集まったのだ。その十名こそが、二十二年前に発足したゼミOB会のコアメンバーなのだった。しかしこの十数年その全員が揃うことはなかった。全員が、それもあたかも以前と変わらないが如くに一堂に会せるとは。その快挙に何かの予感。
ところがそんな矢先の晦日、つまり昨日なのだが、父親がやらかしてくれた。ブレーキとアクセルを踏み間違えて、自宅の壁と車を大破させたのだ。怒鳴る気にもならない惨状である。車の運転に関しては父もバリバリであったはずだ。“老い”である。二歳年上の芦原修二氏が電車接触事故を起こすのも、七歳上の小川先生が数年まえ膝の腱を切ったりするのも無理はないのかもしれない。
そして短説。一九九五年に復帰して以来、十五年間、年に最低でも一作は書いていた。これはその十六年目のアリバイである。
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