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2017年12月26日 (火)

短説「父の死から一年」西山正義

  父の死から一年

            
西山 正義

 父が死んで満一年が経った。
 平成二十八年の十二月二十五日、家族でク
リスマス会をした。クリスチャンではないが
自宅でクリスマスらしい食材を用意して会食
した。もともと大学四年の息子が、翌春から
就職で地方に赴任することが決まっていたた
め、父母、私と妻に娘息子、それに私の妹の
西山家七名揃っての最後のクリスマス会のつ
もりでいたのだが、その会食からほんの数時
間後にまったく思いがけず父が急死したため、
文字通り最後の晩餐になったのだ。
 そして春に、息子だけでなく、娘も家を出
ることになった。二世帯住宅に七名で暮らし
ていたのが、急に四名になったのだ。そうし
て一年が暮れようとしている。
 一周忌の法要は、年の瀬になる前に、私の
仕事の休みに合わせて既に執り行った。命日
の今日は、母と妹、私と妻の四人で和食レス
トランのランチで済ませた。
 奇しくも今朝、父の部屋を根城にしていた
外猫が死んだ。サビちゃんと呼んでいた。も
う十五年近くいた猫だ。かつてわが家の周辺
を支配していた真っ黒のボス猫が連れてきた
雌猫である。ほとんど飼い猫のようにわが家
から離れなかったが、野良の習性は改まらず
人に慣れることはなかった。二日前、長年い
て初めて撫でさせてもらった。もう衰弱して
いたからだが、明らかに人間に向かって大き
な声で何度も啼いた。妹が二階の部屋で飼っ
ていた片目が不自由なキジトラの雄猫も、先
月十六歳で亡くなった。
 父のパソコンのファイルは、生前から私が
おおむね管理していて、ゴミ箱に入っている
ファイルは削除してもいいものでることを確
認してはいたが、今まで消すことはできなか
った。しかし今日、ゴミ箱を空にした。

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