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2021年5月10日 (月)

短説「四十八年目の憂国忌に」西山正義

   四十八年目の憂国忌に
   
(――空白を埋めるための後付け短説)
            
西山 正義

 平成三十年十一月二十五日、日曜日の朝で
ある。本日はもちろん、一般には「三島事件」
より正確には「盾の会事件」と呼ばれる、い
やもっと正しくは「盾の会義挙」と言うべき、
盾の会隊長・三島由紀夫と同学生長・森田必
勝両烈士の殉節日である。
 あれから四十八年。といっても当時は小学
一年生で、リアルタイムにはっきり意識され
たわけではない。それから十年後、昭和五十
五年の「憂国忌」である。十七歳だった。
 この日を僕は一番大切にしている。しかし
毎年、何の行動もできないし、まことに遺憾
ながら、今では遠い日になっている。
 一昨日はこれも我が国にとって大切な新嘗
祭の日であった。この三日間、今年は金・土
・日で、久しぶりに三連休を取った。しかし、
「新嘗を祝ふ集ひ」に参列するためでも「憂
国忌」に出席するためでもなかった。ソフト
ボールの大会に行くためだった。
 地区大会ではなく、東京一を決める都大会。
それゆえ、本来ならもういいおじさんの僕が
出る幕はないのだが、祭日の一昨日は若手の
集まりが厳しく、FP(守備のみ)であった
がレフトでフル出場した。結果は、最後一点
差まで詰め寄ったが負けた。そんなわけで、
今日は試合はなく練習のみだが、これから着
替えて地元のグラウンドに行く。
 このところ、ジャン=ジャック・ルソーの
『孤独な散歩者の夢想』を読みはじめたり、
三一書房の『戦後詩大系』や大手拓次、三好
達治、谷川俊太郎の詩集を読み返したり、昨
日も急に思い立ってヘミングウェイの最初の
短編集『われらの時代(IN OUR TIME)』を
再読し始めたりしてはいるが、読むだけで、
書いてはいない。三島さん・森田さん自決の
日に、何とも情けない限りである。

ブログ:平成30年(2018)11月25日(日)~9:14
短説化:令和3年(2021)5月10日(月)11:30~14:30

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