短説「四十八年目の憂国忌に」西山正義
四十八年目の憂国忌に (――空白を埋めるための後付け短説) 西山 正義 ・ 平成三十年十一月二十五日、日曜日の朝で ある。本日はもちろん、一般には「三島事件」 より正確には「盾の会事件」と呼ばれる、い やもっと正しくは「盾の会義挙」と言うべき、 盾の会隊長・三島由紀夫と同学生長・森田必 勝両烈士の殉節日である。 あれから四十八年。といっても当時は小学 一年生で、リアルタイムにはっきり意識され たわけではない。それから十年後、昭和五十 五年の「憂国忌」である。十七歳だった。 この日を僕は一番大切にしている。しかし 毎年、何の行動もできないし、まことに遺憾 ながら、今では遠い日になっている。 一昨日はこれも我が国にとって大切な新嘗 祭の日であった。この三日間、今年は金・土 ・日で、久しぶりに三連休を取った。しかし、 「新嘗を祝ふ集ひ」に参列するためでも「憂 国忌」に出席するためでもなかった。ソフト ボールの大会に行くためだった。 地区大会ではなく、東京一を決める都大会。 それゆえ、本来ならもういいおじさんの僕が 出る幕はないのだが、祭日の一昨日は若手の 集まりが厳しく、FP(守備のみ)であった がレフトでフル出場した。結果は、最後一点 差まで詰め寄ったが負けた。そんなわけで、 今日は試合はなく練習のみだが、これから着 替えて地元のグラウンドに行く。 このところ、ジャン=ジャック・ルソーの 『孤独な散歩者の夢想』を読みはじめたり、 三一書房の『戦後詩大系』や大手拓次、三好 達治、谷川俊太郎の詩集を読み返したり、昨 日も急に思い立ってヘミングウェイの最初の 短編集『われらの時代(IN OUR TIME)』を 再読し始めたりしてはいるが、読むだけで、 書いてはいない。三島さん・森田さん自決の 日に、何とも情けない限りである。 |
ブログ:平成30年(2018)11月25日(日)~9:14
短説化:令和3年(2021)5月10日(月)11:30~14:30
| 固定リンク
「短説〈西山正義作品〉」カテゴリの記事
- 短説「六十歳の誕生日に」(2023.04.08)
- 短説「車検の話から」 (2023.03.16)
- 短説「息子の嫁から(そして靖國神社と浅草寺へ)」(2023.01.29)
- 短説「富士塚とスンドゥブと壁当て」(2023.01.07)
- 短説「穴と鳩の森の八幡さま詣」(2023.01.07)
コメント