短説「本を売る Ⅱ」西山正義
本を売る Ⅱ (――空白を埋めるための後付け短説) 西山 正義 ・ 娘が「文学フリマ」に行ってきた。親とは 関係なく。平成二十六年五月五日、朝から出 かけていた娘が、帰宅して初めて知ったのだ った。ただし出店したのではなく、詩を書い ているという大学時代の友人と見物しに。 もう十八回目になるというこの「文学フリ マ」が、かつて水南森さんと私と妻でやって いた『日&月』が出店した「全国文芸同人誌 展示即売会・復活祭」や「オールジャンル文 章同人誌即売会・ぶんぶん!」と関係あるの かないのかは不明だが、同じ系統のイベント で、年々規模が大きくなっているようだ。 会場は、この五回ほどは東京流通センター であるが、その前の五回は蒲田の大田区産業 プラザPiOだったらしく、こちらは二〇〇〇 年三月の「ぶんぶん!第一回」で出店したこ とのある会場だ。 その会場には、当時五歳の息子は連れて行 ったが、娘は行っていない。実はちょっとし たトラブルがあって、不快な思い出が残って いるのだ。それ以前、一九九六年から七年に かけて参加した「復活祭」は別の会場であっ たが、娘は覚えているという。当時娘はまだ 幼稚園生だった。親が出した雑誌を売り、う さぎの表紙が気に入った絵本作家の冊子を買 ったりしたのだった。そのことを友人に話し たら、「ありえねぇー」と言われたらしい。 いわゆる「コミケ」ほどではないにしろ、 文章メインの同人誌の即売会も今ではけっこ う盛況のようだ。 実はこの時は下見だったようで、それから 半年後の第十九回文学フリマに、その友人と ユニットを組んだ詩集と個人小冊子を発行し て出店したのだった。親子二代して。娘の友 人は「ありえねぇー」と言うだろうが、わが 家では「ありえるー」になるのであった。 |
| 固定リンク
「短説〈西山正義作品〉」カテゴリの記事
- 短説「六十歳の誕生日に」(2023.04.08)
- 短説「車検の話から」 (2023.03.16)
- 短説「息子の嫁から(そして靖國神社と浅草寺へ)」(2023.01.29)
- 短説「富士塚とスンドゥブと壁当て」(2023.01.07)
- 短説「穴と鳩の森の八幡さま詣」(2023.01.07)
コメント