短説「富士塚とスンドゥブと壁当て」
富士塚とスンドゥブと壁当て 西山 正義
千駄ヶ谷の鳩森八幡神社の周辺はむかしか ら仕事でも馴染みの所だが、よくよく参拝し たことはなかった。問題は駐車場だが、最寄 りの有料パーキングが空いていた。 境内に入ればまず目に付くのだが、そうだ った、富士塚で有名なのを思い出した。寛政 元年(一七八九)の築造といわれ、都内に現 存するものでは最も古く、都指定の有形民俗 文化財になっているとのこと。まずは本殿に 参拝し、富士塚に登頂する。 将棋堂という六角形の御堂に大きな王将の 駒が祀られているが、なぜと思ったら、日本 将棋連盟の本部がすぐ近くにあるのだった。 初夏には紫陽花がよろしいらしい。 二時半をすぎた。近くの国立競技場前にあ るホープ軒が正月もやっているようだ。雑煮 やお節もいいけれど、やはり飽きるもので、 無性にラーメンが食べたくなった。しかし考 えることはみな同じで、長蛇の列であった。 あきらめてまた車を走らせた。 靖国神社も当然のことながら駐車場渋滞。 神楽坂は車輌進入禁止になっていた。それは そうだろう。そうやって走っていると、また 早稲田方面に来てしまったが、高田馬場なら 車が停められて食事できるところがあるだろ うと目星を付けていた。高田馬場は、私たち 夫婦にとって「青春」の場所なのであった。 二人とも早稲田の学生ではないのだが……。 正月とは全く関係ないが、韓国料理のスン ドゥブ(純豆腐)チゲ(鍋)の店に入った。 さすがは学生街で、量に比してお手軽な値段 であった。辛い鍋はからだが温まった。 そして三日。妻は午後から歌舞伎の観劇は じめに銀座へ。私はソフトボールの投球はじ めに、ウォーキングを兼ねて少し離れた団地 の公園へ。六十代もこんな感じになろう。
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